山椒の小部屋

JAPANESE PEPPER ROOM

vol.13

山椒の病気について①

山椒は他の植物に比べて、病害虫が少ないと言われています。これは果樹園形式のように一つの植物を一箇所に集中して栽培することが少ないからです。小川町でも古い農家の庭先には、自家用に1~2本の山椒を植えてあります。

通常家庭で使用する量であれば、中程度の樹が1本あれば1年分が充分に収穫できます。しかし香辛料としてまとまった量を生産しなければならない場合、果樹園形式の栽培方法にしなければ効率が悪くなってしまいます。

一つの作物を集中して栽培すると、それを食物とする昆虫やカビ・バクテリアが集まりやすくなります。そのため果樹園形式の栽培では、病害虫の予防・駆除が大変大切になってきます。

山椒は繁殖力は強いのですが、枯死しやすい傾向の植物です。感染し易い病気が流行すると、周辺樹木に病気が広がり、その年の収穫が0になってしまう果樹園もあります。今回は山椒栽培で悩みの種である病気のうち、サンショウさび病(Coleosporium xanthoxyli)をご紹介します。(参考文献 The Rust Flora of Japanなど)


■サンショウさび病(Coleosporium xanthoxyli)

【写真1】のように葉の裏や表面に、赤い病班が表れます。 病班はボツボツしていて、鉄棒に浮いている赤錆にそっくりです。命名者は、大変良いセンスだと思います。

さて、このサビ病ですが、少しの発生であれば、どうという事はないのですが、大量発生すると、9~10月にかけて病班の出た葉が落葉してしまいます。(本当に丸坊主になってしまいます)落葉後、季節を勘違いした山椒は、来年萌芽する筈の花芽を秋から冬にかけて出してしまいます。これを専門用語で「秋芽」と言います。


【写真2】は10月下旬に萌芽した秋芽です。見づらいですが、後ろの葉は紅葉していて、落葉が始まっています。秋芽は11月頃までに萌芽します。すると花は結実することなく、冬に葉ごと落ちてしまいます。ここから少し難しいのですが、山椒など果樹の花は開花する前年に、花芽を準備します。これを花芽分化といいます。 山椒は6月下旬~7月上旬に分化をすると考えられています。(Hort.Res (Japan)) 4 (4):423―427.2005.)翌年、秋芽の出た部分は実が付かず、葉だけが生い茂ることになります。その年の果実収穫は出来ません。

また余分な萌芽を行うことで、翌年の樹勢が低下します。山椒は弱り始めると他の病気を誘発するのか、大木でもコロリと枯死してしまいます。

サビ病菌は、担子菌類のサビキン目(Pucciniales)に属する植物寄生菌です。ここからは専門外ですので、概略のみお伝えします。サビ病菌は2種類の全く異なる植物に寄生して、生活しています。サンショウさび病の場合、宿主はサンショウ類と二葉松針葉上になります。【図1参照】


サビ菌は複雑な世代交換を行います。宿主に完全依存(生きている細胞からしか栄養を取ることが出来ません)して生活する為、一般的に宿主を殺してしまうことは少ないといわれています。


■サンショウさび病の生活環

上記の特性から、サンショウ果樹園周辺には、赤松や黒松などを植林しない方が良いと思われます。サビ病菌に関する詳しい情報は専門書もしくは以下のHPをご参照下さい。

http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~yyamaoka/index_yy.html

筑波大学 山岡先生のHP