vol.07
山椒の四季について
いし本食品実験圃場(埼玉県小川町)では、山椒栽培品種や野生種の品種保存を行なっています。当「山椒の小部屋」は、山椒栽培に興味のある方が多いようですので、山椒の四季について簡単なご説明をさせていただきます。
いし本食品で使用しているブドウ山椒は、毎年このような生育をしています。
3月下旬に芽が動き始めました。【写真1】小川町では桜の花が咲き始める頃、山椒も目を覚まします。今年も無事に収穫できることを願います。
4月中旬に花が咲き始めました。【写真2】花を良く見ると、真ん中に雌しべが一本伸びています。ここに雄花の花粉が付くと、実が大きくなります。雌花は2~4個でまとまっています。一房は50~100粒位になります。
花の付いていない枝は、物凄いスピードで伸びて行きます。【写真3】山椒は樹体内水分の蒸散が激しいので、生長スピードが早すぎ、暑い日には萎れてしまうこともあります。
5月下旬には大きな実になります。【写真4】中の実は透明~白で柔らかいです。
この時期に収穫すると、佃煮などに最適です。もうすっかり辛味が付いているので、試食の際は充分注意して下さい。
5月下旬~6月上旬に枝の伸長は止まります。実の付いていない枝は60cm位のびます。
最先端の葉がY字になっているのが分かるでしょうか。これを「留め葉」といい、樹の生長具合を見る目安にします。余りいつまでも枝が長く伸びる様なら、窒素が効きすぎているかもしれません。肥料のあげ方に注意が必要です。
7月中旬には、実が充実してきます。【写真5】中の種は黒く硬くなっています。この時期に収穫した果実は、乾燥させて粉山椒にします。いし本食品の実験圃場では無農薬栽培の実験を行っています。そのため、この時期辺りから、山椒に付く害虫駆除に忙殺されます。
【写真6】はナミアゲハ幼虫です。放っておくと、小さな樹なら丸坊主にされてしまいます。この他にもアブラムシ類、カミキリムシ類、カイガラムシ類などが発生します。良く出来たもので、農薬を撒かないと、天敵生物も大量にやってきます。これらの生態も大変興味深いのですが、今回は説明を割愛させていただきます。
しかし果樹の無農薬栽培は大変です。無農薬栽培を行われている農家の方々には、頭が下がります。
【写真7】は9月上旬の果実です。緑から赤色に変わりつつあります。この時期の果実は、和漢薬の原料として利用されます。
9月を過ぎると、果実は朱色になります。
【写真8】日当たりの良い部分から着色が始まるようです。この時期になると、種皮が割れて、中から黒い種子が見えるようになります。ここまで成熟が進むと、香りや辛味が揮発してしまい、弱くなってしまいます。
最後は【写真9】の様子になります。種皮は茶色くなり、種子は全て露出します。このまま置いておくと、風に吹かれて種が落ちてしまいます。鳩も果実種子を食べに来ます。こんなに辛いものを大量に食べて、大丈夫なのでしょうか?
12月には全て落葉します。【写真10】来年の萌芽までにカイガラムシや、その他の害虫の卵や蛹を落としておきます。寒くなるようなら、根が凍りつかないように、敷き藁を敷いて、放射冷却による凍結を防ぎます。来年萌芽する前に、有機肥料をしっかりと施しておきます。
小川町の実験圃場での、ブドウ山椒はこのように生育します。皆さんの地域では小川町と、どのような違いがあるでしょうか?