山椒の小部屋

JAPANESE PEPPER ROOM

vol.12

山椒の野生種について③

山椒は一般的に寒い所よりは暖かい所を好みます。これまで紹介したフユザンショウやイヌザンショウは、温帯地方に自生しています。今回ご紹介する野生種ヒレザンショウは、沖縄地方に自生する亜熱帯地方原産のサンショウです。ヒレザンショウは低温に弱く、余り寒い所では枯死してしまいます。小川町は冬期に-5℃位まで冷え込んでしまう為、露地では越冬できません。いし本食品実験圃場では、鉢植えにして温室で越冬します。その為、沖縄地方で自生している樹とは、開花などの時期がずれてしまいます。今回は温室内での各生長 段階と、資料(緑化樹木のしおり 新報出版)での生長時期を合わせてご紹介します。


■ヒレザンショウ(Zanthoxylum beecheyanum K.Koch)

ヒレザンショウはフユザンショウなどと異なり、雄株と雌株が確認されています。常緑樹であり、硬くて光 ある厚い葉が出ます。棘は小さく、良く折れます。指に棘が刺さると、引き抜くのに大変苦労します。

分布は小笠原・沖縄地方と資料にありますが、中国の河北省でも観葉植物として温室で栽培していました。もしかするとアジアの亜熱帯地方に広く分布しているのかもしれません。

【写真1】は萌芽期です。温室では1月上旬に萌芽しました。沖縄地方では3月下旬頃になるようです。


■開花

【写真2】は雄花の様子です。黄色い花粉を付けた雄花が、枝の周辺に付いています。開花時期は他のサンショウに比べて揃っていません。沖縄地方でも5月頃まで次々と開花するようです。また剪定などを行い、新しい枝が出ると、秋でも花が咲いたりします。

【写真3】は雌花です。これも枝に近い部分から直接、花が付きます。実の付き方は、中国の花椒やフユザンショウに良く似ています。


■果実

果実は沖縄地方では7月下旬位から赤くなり始めます。【写真4】は8月中旬の果実の状態です。実は食べようと思えば、食べられないことも無いようです。柑橘系の甘い香りがしますが、辛味は若干弱く感じます。


■庭木として

ヒレザンショウは幹からの分枝が、非常に活発です。太い枝を切ると、切り口周辺から細い新梢が複数出ます。そこでこまめに刈り込を行うと、【写真5】のように庭木として仕立てることが可能です。写真は石垣島で撮影したものです。まるでツゲの古木の ように見事な庭木でした。ヒレザンショウは塩害に強く、沖縄のアルカリ土壌でも立派に育ちます。乾燥にも強いので、何かの役に立てたいと考えていますが、生長が極端に遅いのが残念です。おそらく右の庭木の樹齢は、30年以上経過しているのではないでしょうか。


■繁殖

繁殖は実生苗でも挿し木でも可能です。葉が丈夫でツヤがあり、可愛らしい形をしているので、観葉植物として販売されています。