vol.16
山椒の野生種について④
インターネットなどで検索すると山椒類は、全て雌雄異株(当コラム「山椒の性別について」参照)であると説明されていることが多いようです。かなり有名な植物図鑑でもそのように記載されているものがあります。実は以前にご紹介させていただいたイヌサンショウと、今回ご紹介させて頂くカラスサンショウは雌雄同株です。ひょっとして新発見かと思い、過去の文献などを検索しましたが、きちんと絵付で雌雄同株と記載している図鑑もありました 新発見ではなく一寸残念でしたが、カラスサンショウについてご紹介させていただきます。
■カラスサンショウ(Fagara ailanthoides(Sief et Zucc)Engler)
サンショウ類は大木にならない種類が多いのですが、カラスサンショウは樹高10m以上の大木になります。【写真1】の樹は高さ3m位です。葉も大変大きく、小葉一枚が通常のサンショウ葉と同じくらいの大きさになります。樹が若いうち(幼若相)は、枝に大変な数の棘が無数に発生します。剪定した枝をそのまま残しておくと、怪我人が出ること間違いなしです。棘は樹の年齢が大きくなる(成熟相)と、小さくなっていきます。
小川町では4月上~中旬に萌芽が始まります。【写真2 参照】萌芽直後はタラやウルシの芽に良く似ています。もしカラスサンショウを採取しようとする方は注意してください。タラであれば間違いで済みますが ウルシを不用意に触ると被れてしまいます。葉の香気成分ですがサンショウに比べて、ネロリロールなどが多く含まれているようです。悪い香りではありませんが、香水のような、芳香剤のような匂いがします。
7月上旬に【写真3】のような蕾が発生します。蕾の数は正確に数えていませんが、一房に500ヶ位はあると思います。大きい房ならそれ以上あるかもしれません。7月下旬に【写真4】のようなオシベが見られます。写りが悪くて申し訳ありませんが、蕾の上部に黄色いオシベが見られます。オシベの数は3~5本位です。
ちなみに【写真5】はイヌサンショウの花です。カラスサンショウと同じように黄色いオシベが見えます。両種の花は当年枝の先端に付くことが多いようです。
先ほど樹の年齢(幼若相・成熟相)について、お話しましたが、普通、果樹の果実は樹体が成熟相にならないと生りません。有名な言葉に「桃栗三年 柿八年」と言うものがあります。これは、種を蒔いてから果実が収穫できるまでに、その位の時間が必要ですよ。という意味だそうです。実験圃場のカラスサンショウは、和歌山県の農協様から頂いて、12年目に初めて開花しました。樹高を高くしない為、強く剪定を続けていたのが原因かもしれません。
果実は8月上旬から大きくなり、9月下旬から赤く着色します。【写真6】
今年が初めての開花・結実だったせいか、果実の数が少なく、房にまばらな状態で生っています。
この後、11月中旬頃まで黄色~赤色に紅葉した葉は、12月までに落葉します。【写真7】
落葉後に棘で怪我をしないように剪定をしています。カラスサンショウは樹体が大変柔らかく、切った所から大きく枯れ込むことがあります。剪定後は切り口に保護材などを塗布した方が良いようです。