vol.17
花椒について
山椒は主として、日本・朝鮮・中国料理に利用される事が多いようです。山椒はスパイスですから持ち運びも簡単で、使用する量も微量であるため世界中の日本・朝鮮・中国料理店で使用されています。
韓国で自生している山椒は、日本の自生種と余り違いがありませんでした。中国で利用されている山椒は、以前にご紹介したように味と香りが大きく異なります。日本では花山椒、中国山椒などと紹介されている事もありますが、表題のように花椒としてご説明させていただきます。(参考文献 花椒栽培など)
■花椒(Zanthoxylum bungeanum Maxim)
中国本土にも以前ご紹介した野生種フユサンショウ(中国名 竹叶椒)などがあり、総称して花椒と呼ばれる事があります。ここでは食用として栽培されている、上記学名のグループをご説明させていただきます。花椒には栽培品種が多数あります。その説明だけで一冊の本になってしまう程なので、割愛させていただきますが、有名な品種としては大紅袍・大花椒、小紅椒などがあります。
【写真1】は萌芽期の花椒です。小川町では4月上旬から中旬に萌芽が始まります。これはブドウサンショウより遅く、イヌサンショウ、カラスサンショウより早い位です。写真を見てお分かりになるように、枝には大変大きな刺が付きます。収穫・剪定時には怪我をしないよう注意が必要です。萌芽の時期は遅いのですが、一度芽が動き始めると、素晴らしい速度で生長して行きます。
日本品種は一年で60cm位、新しい枝を伸ばすのが良好とされています。当然それ以上長くなる枝もあるのですが、そのような枝には花芽が余り付かないので、果実収穫量が多く見込めない場合があります。
しかし、花椒は一年で120cm程度伸びるのが一般的であるとのことです。ですから栽培地に視察に行くと、日本の樹でいうと樹齢10年位の大きさの樹が、5年経過していないと言われてビックリする時があります。
【写真2】は5月中旬の様子です。葉は日本品種に比べて大きく、赤みが強いのが特徴です。中国では新芽を食べる地方もあるようで、通訳のスタッフは卵焼きにして食べた事があるとのことでした。香りは果実と同様に、山椒とは異なりますが独特の芳香があります。
花【写真3】は5月上下旬に開花します。花の形は山椒に大変良く似ていますが、花は花の咲いた枝の前年の枝に近い場所に咲きます。そのため収穫時には刺の多い場所に果実が付き、手が傷だらけになってしまいます。
これまで実生苗も試験的に栽培したのですが、雄株を見た事がありません。現地の専門家に質問したのですが、花椒に雄花はないとのことでした。
【写真4】は7月上旬の果実の状態です。フユサンショウの時にご説明しましたが、果実表面を良く見ると、凸型にデコボコしています。山椒は凹型になっています。果実が赤くなり始める時期は、この頃になります(画面下部に赤い実が見えます)。山椒はこの時期から、乾燥果実の収穫を始めますが、中国では9月上旬位に収穫を始める事が多いようです。
【写真5】は8月上旬の果実の様子です。既に真っ赤になっています。ただ、中国で栽培している果実の方が、赤色が強いような気がします。本場中国では栽培スケールも日本と異なります。日本では傾斜地に少しずつ植え付けてある事が多いのですが、中国では一山まるごと花椒畑というケースがあります。栽培方法もダイナミックで、ちょっと驚いてしまう事があります。
【写真6】ですが画面中央に、大きな石がぶら下がっているのがお分かりでしょうか。収穫しやすいように果実がなる側枝を、下側に誘引している所です。花椒は真っすぐ上に大きくなる性質があるので、枝を広く、低く仕立てる必要があります。
【写真7】は根元の主幹を開脚している所です。中央にある石の重さで、樹体が杯状に開くとの事でした。岩や大きな石が沢山ある山間部では、大変省力的で効率が良いと思います。
今回、参考文献として紹介した「花椒栽培」ですが、この中にも上記方法は紹介されています。しかし現地に入るまでは半分信じられませんでした。実際に見ると感動します。